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「頚椎の手術は前から切るのか後ろから切るのか、どちらがよいでしょう?」

整形外科 鎌田 修博けいゆう病院

頚椎疾患によって手術を勧められている方はいろいろ調べてみると、前方(のどの方)から切る手術(前方法)と後から切る手術(後方法)があることに気づかれると思います。「では私は前後どちらから手術されるのかしら?」こんな疑問に対して多少とも参考になればと思い寄稿しました。
前方法は基本的に脊髄神経を圧迫している原因が脊髄より前方にある場合に選択されます。椎間板ヘルニアが代表的な疾患ですが、頚椎後縦靭帯骨化症の一部、頚椎後弯変形(くの字変形)などの疾患でも選択されます。一般には同時に固定術を行うので術後頚椎の可動域が減少したり(借金同様に?首が回らなくなる)、将来隣接椎間に問題が生じたりします。また、固定を強力にするため金属製の内固定材を併用することもあります。したがって病巣範囲が1,2か所で小範囲なら前方法の適応がありますが、3か所以上の広範囲になると後方法を選択することが一般的です。また、もともと骨のつくりが狭い脊柱管狭窄症では前方法より後方法が長期的には成績が安定しています。しかしなんといっていも前方法は術後の「すっきり度(専門用語では切れ味)」が抜群です。
後方法は病巣範囲が3か所以上にわたる一般的な頚椎症性脊髄症ではもっともよく選択されます。最近は病巣範囲が1,2か所の小範囲でも行われています。後方法は固定術を併用しないので術後の後療法が簡単で頚椎装具の使用もごく短期間で十分です。また頚椎の可動域の低下もわずかです。しかし術後に創部や頚部の疼痛が生じることが問題です。長期間この痛みが続くことは少なくなりましたが、やはりゼロではありません。
主治医はこれらの点を総合的に検討して最善の術式を選択します。両者とも手術の合併症や手のしびれの残存は避けられない問題ですが、当院ではこれらの問題点の解消に向け現在術式改良に取り組んでいます。