『せぼね』の骨折

脊椎センター 戸川大輔函館中央病院

ご高齢の女性が背中の痛みを訴えて外来に来られることはよくあります。いくつかの検査結果を見て“せぼね”が折れてますね・・・と私が言うと驚かれる患者様は少なくありません。骨粗鬆症という言葉は日頃から耳慣れた言葉ですので患者様はすぐに理解されるのですが、骨折というと“ポキッ”と硬い手足の骨が折れるイメージが強いのか、“せぼね”が折れるという言葉には直ぐにはピンとこない方が多いようです。また、“せぼね”の骨折で肋骨周囲やわき腹の痛み、でん部の痛みがでることがあることもあまり良く知られていません。
いわゆる“せぼね”は、頭から骨盤までの間で体を支える大切な支柱であり、さらに腕や胸、でん部や足に行く神経の入れ物でもあります。いくつもの骨が椎間板というクッションを間にはさみながら連なって体のやや後方に位置しながら、体がしなやかに動くように機能しています。年齢を重ねて骨がもろくなると、そのひとつひとつの骨の節が潰れるように骨折するのが“せぼね”の骨折です。比較的若い人が転落や自動車事故など、大きな負荷がかかって“せぼね”を骨折することもありますが、お年を召された患者様では、転倒はもちろん、ちょっと体を捻ったり、強く曲げたりしただけでもこの“せぼね”の節を骨折することがあります。
骨折には痛みを伴います。その痛みをとるためにはその骨折した骨が動かないように硬いコルセットやギプスで一定期間は固定をしなくてはなりません。もちろん痛みをとるためのお薬も役に立ちます。骨折の原因が骨粗鬆症であるならば、その程度を把握し、今以上に進行しないように薬物治療をする必要もあります。
“せぼね”の骨折で足の力が弱くなってしまったり、しびれや感覚の異常がでてしまったら、それは“せぼね”のなかの神経が痛んでいるかもしれませんので、できるだけ早く“せぼね”の専門医を受診してください。また、いつまでも続く強い痛みは“せぼね”の骨折がうまく治っていない可能性があります。最近はいつまでも続く強い痛みを解消するための手術を行う施設もあります。“せぼね”の大事な機能である“支柱”、“神経の入れ物”、“スムーズな体の動き”をなるべく損なわずに痛みを和らげる治療を、我々脊椎外科医は目指しています。